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アベノミクス失敗 ばら撒き選挙

安倍首相は5日の閣議で、2016年度予算について各担当閣僚に対し事業費12兆1000億円の執行を前倒しし、9月末までに8割程度を契約することを目指すよう指示した。

事業費の内訳は、公共事業のほか学校施設、空港、高速道路、UR等の整備に関するものとなっている。

ここまで書けば、安倍首相が「安保法や改憲」「アベノミクス失敗」と云った争点を避け、参議院選挙を自民党定番の「組織型ばら撒き」で戦う方針としたことが分かる。

世界の著名な経済学者を招聘し、「消費増税10%先送り」を大マスコミに一斉に報じさせ、それをサミット後に英断を下すかたち(劇場)で争点化しようとしたが、オフレコとされた会合内容をスティグリッツ教授が公開し、かつ、その内容が「アベノミクス全否定」であったことから、この争点で選挙を戦うと野党に「アベノミクス失敗」を強烈に批判されることが目に見えており、仮に増税を決行しても「財政政策」だと云ってばら撒きをするほうが良いと考えたのだろう。

96条改正で世論の批判が高まると、くるりと解釈改憲に掌を返したようにいつもの安倍官邸のご都合政治がそこにある。またかと思うのは、本紙だけではあるまい。なにしろ本紙調査でも八割が「アベノミクス失敗」と回答しているのだから、そこにスティグリッツ教授の資料では、まさにアベノミクスは詰んでいるところまで追い詰められたと云える。

そこで安倍首相は、ならば「風を吹かすまでだ」と10兆円のカネをばら撒き、しかもその予算先を自らの地盤である公共事業とすれば、一見すると政府支出によるGDPが改善されるだけでなく、自民党の組織地盤を暖める効果があり、かつ、アベノミクスの失敗に反論することができるという目論見(一石三鳥)だ。しかもスティグリッツ教授の資料から「財政政策」を摘んでいるので、美味しいところ取りを主張できる。

しかし昨日も書いたように、スティグリッツ教授の提言には明確な「思想」が背骨として通っていて、その「思想」は経団連を支持母体とする自民党とは相容れない。スティグリッツ教授の提言はむしろ「格差社会」に向けられていて、その理論は「民進党」を含む野党の「思想」に近い。

黒田日銀による質的量的緩和政策(QQE)は、ゼロサムゲームと切り捨てられている。
いま米大統領予備選では、米国の出口がない閉塞感という空気を読んだトランプ氏が、いわば扇動行為を行なっているが、扇動行為が米国の病巣を治療できるわけがなく、スティグリッツ教授の提言は巨大な大蛇に巻かれた米国に処方箋を提供している。

日本にとっても失われた25年を突破する「この道」の処方箋と成り得るもので、とりわけ「適切な規制」「適切な租税調整効果」「適切な現代のインフラ整備」を挙げる。同時に「独占の弊害」を指摘し、それは暗に経団連を中心とした特定大企業への偏った政策(過度集中)が市場を歪め、かえって経済成長を阻害する要因となるとしている。

したがってスティグリッツ教授の提言を、経団連を支持母体とする安倍自民党政権が採用することは困難であり、今回のようにその都合がよいところだけを摘むという手法は、それ自体が矛盾であり、そのツケは最終的に国民に回される。むしろ「改革」を標榜する政治勢力が、このスティグリッツ教授の提言を読み解き、そこに失われた25年の突破口を開くことを期待したい。

いま「新自由主義の時代」は終わりを迎えつつある。
このへんで手仕舞いとすべきだ。
森薫 ( 2016-04-05 14:26:46 )






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